2019年10月17日 (木)

(682) 頭の良さ

今回は、発達障害に関わるお話ではありません。

皆さんは、一般に「頭が良い」という表現を聞いて、どのようなことを思い浮かべるでしょうか?

恐らく、「勉強ができる」とか「求められていることを的確に把握して反応できる」という答えが返ってくるものと思います。私も、これに対しては同意です。

ただ、最近ちょっと違うんじゃないかなと思う部分があります。

確かに人間の理解力・表現力は人によって差があります。でも、その差を生み出す原因って何だろうと考えると、実は好奇心と集中力なのではないかと思うのです。言い換えると、好奇心を持って集中力を持続できることで、ものごとを解決できる、それを頭が良いと表現しているのだ、ということです。

何にでも興味関心を持って、自分の頭で理解するまで粘り強く試行錯誤するというのも能力であって、誰にでもできることではありません。それでも、よくわからない課題を出された時に、すぐに諦めてしまわずにわかるまで取り組む人は一定程度いて、そういう人は勉強にも同じように取り組むでしょうから、当然勉強ができるようになります。

また、何にでも興味を持って取り組む好奇心があれば、さまざまなものについても一通り手を出してみるでしょうし、その結果として得られた経験値は、何かを求められた時に比較対照することができますから、結果的に求められている正解に早く近づけるようになります。

実は、今のシーズンでは多くの中学や高校で学園祭が行われています。「頭が良い」と言われる学校の学園祭での展示は、そうでない学校のものと比較すると、完成度も高く、かつ大人が見ても面白いものが多いです。それは、頭が良いという評価とは別に、単に彼らが興味関心を持って納得いくまで集中して取り組んだ成果を展示しているからではないか、と思うのです。

ひらめきを大切にする人を否定するつもりはありませんが、やはり多くの場合は目の前のことに興味を持って集中的に取り組んだことにより、次のステップが見えてくることが多い、と私は思います。

頭の良さを単に持って生まれたものとして「あの人は頭が良いから」で終わらせるとそこで思考が止まってしまいますが、このような見方をすることで、例えば我が子に足りないのは好奇心なのか集中力なのかという分解ができます。そうすることで、どちらでつまづいているのかを把握でき、補う取り組みができるようになると考えています。

2012年12月 9日 (日)

(370) 親学と政策

来週の選挙を控え、街角では候補者が声を張り上げています。

原発、経済、財政、雇用、年金等どちらを向いても問題山積の中で、候補者の得意な一部分だけの主張で決めてはいけないだろうと感じています。

自分は、今育児の真っ最中なので、そちらについても関心が強いのですが、12月9日付の毎日新聞の選挙特集「選択の手引」は興味深かったので引用させて頂きます。

「野田佳彦首相は6日、静岡県掛川市での街頭演説で「働きながらも子どもを預けられる。これは現役世代が一番望んでいるサービスだ。着実に進めていきたい」と訴えた。民主党は、前回の09年衆院選で「チルドレン・ファースト(子ども第一)」を掲げ、子育ての社会化を実現するための施策を打ち出した。今回のマニフェストでも「3歳未満の保育施設利用者を5年間で36万人増やす」などの子育て支援策を並べる。

 一方、自民党は、総合政策集で「子どもは社会が育てる」という民主党の主張を「誤った政策」と断言。「子どもは家庭が育てる」と訴え、柱の一つとして「育休を取りやすい環境整備などで、ゼロ歳児に親が寄り添って育てられる社会の推進」を掲げる。」

ここで、両党の方向性が違うことが明らかにされていて、さてどちらが良いのだろう? と考えてみました。

実は、両方とも実現可能性で疑問符がつきます。民主党案では、保育設備にかかる費用をどこから捻出するんだろう? こども手当も前回選挙のマニフェスト通りにはならなかったじゃないか? という思いが募りますし、自民党案は、民間企業の社員にどうやって育休を取らせるんだろう? という疑問が湧きます。

この二つだけで並べると、どっちもどっちかなと思うのですが、自民党案は、親学とつながっていることが透けて見えてしまうため、どうしても色眼鏡で見てしまいます。親学の思想が、同じ毎日新聞の引用記事の冒頭の部分

「今年5月、自民党文教族の衆院議員のブログが「炎上」した。乳幼児に親が寄り添って育てる伝統的な子育てにより発達障害を予防できる、という議員の書き込みに対し「愛情で予防できるものではない」などの抗議が殺到したからだ。」

の「議員の書き込み」に表れていることは明らかだと、私は感じています(記事中に親学という言葉は出てきませんけど)。

私は「親が子を育てる、故に親がきちんとしなければならない」までは認めても良いのです。でも「子が発達障害になったのは、親がきちんと育てなかったからだ」は明らかに根拠レスです。

全身全霊を注いで子を育てていても、発達障害は確実には防げませんし、逆に適当に育てていても、健常の子は健常で発達障害にはならないのです。どうも障害と社会常識の欠如を同列に考えられているのではなかろうかと感じられるのですが、これは明らかに異なるものです。それなのに、障害も「親が何とかすれば何とかなる」と思い込む方が、必ず出てくるんだなあと驚いています。

以前、twitterで「自閉症界(あるんか?)で有名なテンプル・グランディンさんは、自分が伝統的なしつけを受けてきたことを評価していたなあ。だけど、これって逆に言えば、伝統的な育児をする家庭であっても、発達障害児は生まれるし防げなかったという実例に他ならないのではないか。親学論者に聞いてみたい。」とつぶやいてみましたが、残念ながら親学論者からコメントは頂けておりません。

選挙情勢は自民党有利なようですが、この部分だけは再考願いたいです。

2012年12月 5日 (水)

(369) 健常男子を預かった後で考えたこと

前回の記事では、健常児と関わってどのようなところに着目したかを中心に書きましたが、その後いろいろと考えたことがあり、今回はそれを書いてみます。

確かに、健常の子は手がかからない。「想定外」の行動をしない。この点は楽です。でも、一方で関わりを求めてきます。それも、数も量も多く。

私は、預かった時間がそれほど長くはなかったこともあって、そのような振る舞いが新鮮に感じられましたし、率直に楽しいと感じました。そして、恐らく大抵の親は、同様に感じるだろうと思います。とはいえ、それは絶対だとも思いません。時間と気持ちの余裕がある時なら、という条件がつくように思います。でも、もしそうじゃなかったらどうでしょうか。

「自分にかまって!」と常に強烈にアピールしてくるエネルギーの強さを考えると、親としても時として「面倒だ」「相手をしきれない」とのネガティブな感情を持つこともあるのだろう、そして実際にそのような態度を取ることもあるのだろうと思うのです。

それは一概に悪いと決め付けるものではないと思います。親と子で考えていることは当然違いますし、その両者が関わりを持てばいずれ軋轢が生じてくるのは不可避だと思います。そういう経験を積み重ねることによって、子供も自分がどのような行動を取れば良いかを少しずつ理解して、初期の社会性を学んでいくという点では、子の成長に資するものになると受け止めています。

そういうことを許さない「親は常に全力で子に向かうべきだ」と言わんばかりの風潮やそれを背景にした意見が、ネット議論等で少なからず語られることがあることに、疑念を感じておりますし。

一方で、障害児育児というのは、どうしても親の側からの関わりが強くなりがちになって、子の側からの関わりは相対的に弱いものとなります。端的には、子供が何を考えているのかをわかりやすく親に伝えようとしない、という傾向があり、一方で今対応が必要なこと(例えば、食事・身の回り・排泄等)が出てくると、待ってられないことから「○○してあげないと」と親が先回りしてあれこれやってしまい、結果として子供の要求の表現を育てることが弱くなる、という事態が起こりがちになります。このことは、結果として親子の関わり方として見れば、よろしくない循環に陥る危険性をはらんでいるように感じます。

このような親と子の関わりの違いによって、健常の子は軋轢を繰り返しながら社会性を学び、親の引力圏から段々と遠ざかっていくこととなります。更に就学後は友達との関わりが強くなって、その方向は加速していきます。

一方で、障害児は人との関わる意欲が低くなりがちで、親から子への関わりが強くなり過ぎる結果、その引力圏に長く留まることとなります。そうせざるを得なくなる事情もわかりますが、少なくともこのようなことは意識しなければなりませんし、できれば少しずつでも離れて親以外の人との関わりを増やすような機会を作っていく必要があるのではないかと考えます。

なぜならば、親は子とは別個の存在ですし、何より親は子より大抵先に死ぬからです。当たり前のことですが、だからこそきちんと意識し続けることが大切になると考えています。

健常の子育ては、育児に関わる時間は短い。だから「振り返ればあっという間」という表現をされるのだろうと思います。自分の子育てとは異なるものであることと、その違いからくる方向性及び留意点を改めて認識できた点で、健常の子を預かったことは有意義な経験だったと思います。

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