(617) メデュース号の筏
皆さんは、「メデュース号の筏」という絵をご存知でしょうか。
私は、中学校の美術の時間で習いました。この絵からは、人間の性と劫を強く感じられます。
生への欲求、具体的には、生きるためには何でもやる、絶対にあちら(死者)の側に行きたくないという思いを実際の事件を基に見事に芸術として昇華した傑作だと思います。
今、発達障害のある子を育てる立場になって改めてこの絵を見ると、やはり発達障害の世界に身を置き子を育てる親それぞれの思いに無意識に当てはめてしまって、人間はどのような状況でも変わらないなあ、との思いを禁じえません。
健常児にしたいという欲求、健常児にするためには未検証、すなわちエビデンスのない療法や風説に従って何でもやる、自分は健常児にするために努力する気力を失ったダメな親の側には行きたくないという思い、と比定して書き換えてみたら、見事に相似的関係になることに気付きます。
人間の性というものは、原罪的に避けられないものだとは理解します。でも、やはりこのように一歩引いてみたら、どう見ても美しくないことは明らかです。しかも、発達障害については、エビデンスがない療法が本当に奏功したのかについて、やはり検証がなされていない以上わからない、ということになります。それで良いのでしょうか。
得体の知れないものに縋らない勇気。当たり前だと笑える人ばかりではありません。ご用心、ご用心。
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