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2011年9月10日 (土)

(274) 正統派の弱み

自閉症およびそれに関連する障害について「脳の器質的な障害であって治療して治すことはできない。ただ、療育によってより良い(まだマシな)社会適応をすることはできる」というのが通説であり、こちらが正統派とされています。

通説を平たく言えば、「脳の基本構造が違うんだから、それを手術や投薬等によって普通の人と同じような脳に作り変えることはできない。ただ、脳がその基本構造のままであっても、療育で情報の伝え方を調節しつつ本人に学ばせることによって、今よりはマシな対応ができるようにすることはできる」ということになり、これに従って親は早期から療育に勤しむことになるわけです。

これに対して、ある種の化学物質が脳の正常な働きを阻害しているもしくは○○が足りないことが原因なのであって、それを取り除くあるいは摂取することで健常児のような状態を取り戻すことができるんだ。学会で認められてはいないけれど、やってみる価値はありますよ、という主張や、脳は可塑性があるんだから、やり方によっては健常者と同じような脳の構造に変わることもあるんだ。ある人は○○をやったら調子が良くなったと言っていた。それはまだ科学的に検証されていない方法ではあるんだけど、とにかくやってみよう! というような趣旨の主張を見かけることがあります。

もし、通説のやり方でも、地道に努力すれば健常者と同じような脳の構造に変わり、更に訓練すれば全く普通の子のようになる、ということであれば、あえて検証されていないやり方に手を染める人はいないと思います。ところが、通説では、そんな素敵なことは言ってくれません。これが正統派の弱みであり、この弱みこそが通説ではない方法をやってみようという誘惑にかられる根源であると思っています。

もちろん、通説ではないやり方が実はものすごく画期的な方法で、たまたま検証が追いついていないだけで、未来では極めてオーソドックスな方法になっている、という可能性はゼロではありません。でも、やっぱり検証されることはなく、消えていく可能性もゼロではありません。折衷して両方をやる、という選択もあるでしょう。ただしそれは、両立できるのであれば、という条件付ですが。

当家の場合、自閉的な傾向を示すことは結構あるものの、それに絡む他害・自傷・奇声等のいわゆる問題行動があまり無く、かつ知的障害も(今のところ)無さそうという状態であることから、あえて珍奇なものに手を出さずとも、通説のやり方で必要十分だと判断しています。でも、そうでないお子さんをお育てになっている方の中には、一発勝負に出てみたいという方が出てくるのも、心情としては理解できます。

ただ、その一発勝負の結果を受けるのは子どもです。これは動かしがたい事実です。しかも、一発勝負に出ている間、地道なやり方を放棄してしまっていれば、地道にやっていれば進んでいただろう発達に相対的に遅れが出るかも知れません。そういうリスクを負うのは子どもです。

「それが子どものためだ」という考えを、丁寧に問い直すことは大事だと思います。リスクを負うことまでも子どもが本当に望んでいるのか、そこに自分が子育てに辛いからという自分の利益が混ざっていないか、周囲や義両親から白い目で見られたことによるリベンジ心がないか等等、親として胸に手を当てて考える必要があろうかと。

もし、これが生死に関わることならば、それをやることによる苦痛の度合いも勘案しつつ検討することとなり、苦痛が少ないことを前提に「やむなし」でやることを選ぶかも知れないとは思うのですが、発達障害を直接の原因として死んだ、ということは寡聞にして知りません。

最後は個々のご家庭の判断に収斂する問題ではありますが、人体実験とどう異なるのかは親として自問すべきテーマだろうと。少なくとも、通説以外を唱える方は、それを生業としているわけですから。

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