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2011年7月18日 (月)

(258) 海洋天堂を観て(ネタばれ編・終)

今回でめでたく(?)終了させたいと思っています。なお、今回は映画のネタに触れる部分もありますので、観る予定のある方は読まれない方が良いと思います。

本作の主演はジェット・リーですが、私はぶっちゃけジェット・リーって誰? というレベルだったので、「あのジェット・リーがアクションを封印」とか「脚本に感動してノーギャラで出演を引き受けた」と言われても、その重みがイマイチ分かっておりませんでした。アクションスター時代の彼を知りませんでしたし。

しかし、ジェット・リーの父親としての演技、その目線と表情は本当に素晴らしいです。「体育の教科書の一番最後に載ってはいるが、授業で実際にやることはまずない体を使った表現」を、ここまでできる人ってそうそういないだろうと思いました。

何と言って良いのか…身のこなしというか動作の一つ一つがやっぱり違うんですよね。オーラと言って片付けるにはもったいない…強いて言うなら、「おかあさんといっしょ」の元お姉さんだったはいだしょうこさんが、元タカラジェンヌらしくちょっとした踊りの振り付けでもゆうぞうお兄さんとは明らかに違うキレの良さを見せる、というような感じですか。

名札を縫いつけながら寝ている息子に語りかける「父さんがいなくなったら寂しいかい?」の台詞、公式HPの予告編の動画でも出てきますが、実際に映画を見ている中で彼にこの台詞をつぶやかれたら、もう泣けて泣けて…crying 縫い物をする父親、というだけで全てを一人でこなして息子に深い愛情を注いできたことがわかるわけですから。

精一杯の努力が奇跡を呼び、息子を託す先を確保した父親。でも、ここで安堵することはありません。最後の最後まで息子のためにを貫きます。「父さんは海亀になっていつまでもお前を見てるぞ」(これも予告編の動画にあります)という言葉の意味を息子に分からせるための努力(ここはやっぱりネタばらししません)も、傍から見たら極めて奇異なことをやるわけですが、残り少ない命の炎を燃やしてあそこまで必死さを全面に出して突き抜けられたら、観る側も応援してしまうしかない勢いがあります。

妻の「事故死」の後、全てを背負ってきた一人の父親の満身創痍の姿を見て、親の愛とは何とありがたいことかを思い知り、力尽きた父親の生き様に深い敬意を感じざるを得ませんでした。

なお、障害を抱えた息子がいても、好きになってくれる女性がいるっていうのは、ジェット・リーだからだよなあ…と正しく学習している自分を褒めたいと思います(笑)。

自閉症の息子役の文章さんも、斜めから見る自閉症者の目線や微妙に視線を外したはにかんだような表情をよく体得されて好演だと思います。ただ、これは演出さんの方の問題だと思うのですが、自己刺激の手の小刻みな動きを、自己存在主張の時も同じようにしていたように見えた部分があって、そこは??と思いました(もしかしたら、私の認識の方が間違っているのかも知れませんが)。

彼の、桂綸鎂さん演じるピエロ役の女の子への慕情(?)も淡く消えていくこととなりましたが、人の思いを汲み取れない障害とされながらも自分への好意を敏感に感じ取り、そういう人に懐く自閉症児の特質をよく表現していました。

ただ、このピエロの役は、もうちょっと役を際立たせた方が良いかな、とも思いました。なお桂綸鎂さん、率直に極めて美人で萌える(失礼!)のですが、容貌に陰が無い分ちょっと違和感を覚えます。恐らく自分が障害児の親ではあるものの、知らず知らずのうちに障害にネガティブな感覚を持っており、それとのギャップを感じてしまっているということなのでしょう。

父親が旅立った後も映画は続き、一人残された息子の姿が孤独を直截に表して、観る者の心を暗く不安にさせます。それでも彼は生きていく、父親の必死の療育を活かして生きていく、父親の思いを確かに受け取って…それを端的に表す映像を最後に静かに終幕となり、エンドロールで再現される話中の一コマ一コマに、まるで彼らと一緒に生活してきたかのような懐かしさを感じつつ、次第に温かな思いが胸一杯に広がってきます。

故・水野晴郎さんじゃありませんが「いやぁ、映画って本当に良いもんですねぇ」との思いを深くしました。

以上、猫またぎになるくらい感想を書かせて頂きましたが、それだけいろいろな気付きを与えてくれる素晴らしい作品だと思います。

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