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2010年12月25日 (土)

(196) 自分たちだけの道

ここのところ自閉症界(あるんか、そんなもん? という突込みが入りそうですが)では、とある社長さんに関わる議論があちこちで散見されます。

言霊の幸ふ国なのに攻撃的な言葉を吐き、訴訟をちらつかせて圧力をかける姿勢は全く評価しませんが、療育に対する考え方についてもそうかというと、ちょっとためらいがあります。

障害児の親は、どうしても我が子第一の視点から社会を見る傾向があります。呪縛と言っても良いかも知れません。他に代弁してくれる強力な存在があるならともかく、親を除くと障害児の味方は少ない(それが良い・悪いは別の議論です)以上、これはやむを得ないことだと思います。わが子の幸せ、家族の幸せを目指すのは基本的な欲求であり、それを否定するものではありませんが、じゃあそれが社会の幸せにつながっているのか、という視点も併せ持つ必要があると思います。

この兼ね合いを無視してしまった時、社会と軋轢が生じるのはやむを得ないことで、このことを以って直ちに「社会的弱者である自分たちを守るのが当然、そうしない社会が悪い」と言うのは短絡に過ぎます。そもそも、健常児の家族においても、100%社会に満足ということはあり得ず、まあまあのところで妥協しているわけですから。

また、最近の傾向として子どもの自発的な意思による行動が大切であ(り善であ)るという主張が声高に叫ばれ、強制的に何かをやらせることはその自発の芽を摘む行為であ(り悪であ)る、という2元論が顕著になってきているように感じますが、これも本当にそうか?という疑問があります。

「強制は良くない、本人の意思を大切にしないと」という崇高な理念の前提には反論しづらいのですが、発達には適した時期があって、標準的な健常児とは異なるもののそういう時期は障害児にもあると考えており、それを逃すとその能力の獲得が困難・あるいは不能ということが起こるリスクは容易に想像できます。そして、自発的な意思を待っているうちにその時期を過ぎてしまった場合、これを「本人の意思」の結果であり、それが最大幸福だというのは無理があると思うんです。

もちろん、鉄拳制裁をしたらできるようになる等と言うつもりは毛頭ありませんが、環境を整え自発的な意思が表現しやすくなるようにすることに加え、少なくとも何らかの働きかけをし続けることは必要だと考えます。これは本人が嫌がったら途端にやめるというのではなく、一旦中断しても、機会を改めて再度働きかけるという粘り強さを持って、ということです。やらない理由探しは健全ではありません。

一方で、一言で障害児と言っても子は元々の能力に凸凹がありそのユニークさは千差万別です。更に、そのユニークさに対して得られる社会的援助も子によって異なります。親も神ならぬ身であればこそ、こういう諸条件を勘案しつつ明確な正解が無い中であれこれ思い悩み試行錯誤を重ねているのですから、就労という大きな一区切りの段階までの過程について顧慮せず、結果だけで子(およびその親の姿勢)を判断するというのは雑であり浅薄に過ぎると思います。

結局、誰かの言っていることを真に受けてそのまま行動に出るのではなく、常に社会とのバランスを勘案しつつ、放任や逆に過度の介入にならないように配慮しながら療育という親と子の共同作業を進めて行くしかないのだろうと思います。その過程は機織のようなもので、最初は何だかわからないし多少の織ムラが出る部分もあると思います。でも、ある程度の時間が経てば鮮やかな絵柄が浮き出るでしょうし、それを期待して続けていくべきものなのだと思います。

誰のものでもない、自分たちだけの道を歩んでいくとはこういうことかな、と考えています。

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